前回作業で内部の調整は完了したので、今度は自動演奏装置の確認作業に移ります。
自動演奏の装置が付いてあるピアノは現代だとほとんどありませんので、今回の内容は少し長めになります。
自動演奏ピアノの仕組みとその歴史
自動演奏装置の歴史は非常に興味深く、19世紀の機械式オルガンに始まりました。当時の装置は、穴あきカードやドラムなどを使って演奏を再現していました。
時代が進むにつれ電気を利用したシステムが登場し、1980年頃にはデジタル技術が進化したことで、より高精度で多様な音色を再現できるようになりました。
このG2Aもその一つで、曲によっては多様な音色を再現することが出来ます。
自動演奏ピアノの基本的な仕組みはデジタル音源やメロディを演奏するための電子部品が組み合わさっています。
中央には制御基板があり、これがキーの動きやセンサーからの信号を解析し音を出力します。
また、アクション機構が音の発生に関与し、本体内部に増設された機械が演奏時のタッチ感を提供しますが…お客様から自動演奏が使えないということで制御基盤を取り出して中を確認していきます。
電子部品の役割は、音源の選択や音量調整に加え、演奏する楽曲の記憶や再生機能を担っており、故障やトラブルが発生すると、自動演奏装置が作動しなくなってしまう可能性があります。
自動演奏ピアノには特定の部位に故障が生じやすい特徴があります。
例えば…
電子基板
自動演奏装置でよく見られる故障の一つは電子基板の故障。これにより全体の動作不良が引き起こされる場合があります。
電子部品の寿命と摩耗部位による影響
電子部品は使用頻度や環境によって寿命が変化します。特に、長時間使用することで、基板やモーターに摩耗が生じやすく、これが故障の原因となることがあります。
自動演奏ピアノを使用する際に最も一般的なトラブルの一つは電源が入らない、電源が入るのに作動しないことです。
これらの問題はしばしば簡単な診断で解決できることがあります。
電源トラブルの診断方法
電源が入らない場合は、コンセントや電源ケーブルに問題がないか確認するのがベスト。
ケーブルの断線をチェックすることが基本的な手順です。
これでも解決しない場合は、内部のヒューが切れている可能性もあるため、専門の技術者による点検が必要です。
リモコンやセンサー、基盤の故障の可能性
電源は入るが演奏出来ない場合、リモコンやセンサーに問題があるかもしれません。リモコンの電池が切れている場合やセンサーが正しく機能していない場合、演奏が開始されないことがあります。
リモコンの電池を交換したり、内部の汚れを取り除くことで問題が解決することが多いです。
もし、上記でも解決しない場合は、内部の基盤に液漏れが発生している可能性やソフト(フロッピーディスク)が使えない場合もあるためその際は専門の技術者による点検が必要となります。
故障を防ぐためには
まず、鍵盤周りの埃を取り除くことが重要。
埃は機械の隙間に入り込み、センサーや基盤部分の動作に影響を及ぼすことがあります。
そのためエアダスター等で埃を飛ばしたり掃除機で吸ったりするのが効果的です。
定期的に異常がないか確認しておくことがもっとも重要です。
保管環境や使用頻度による寿命への影響
ピアノの保管環境や、日頃の使い方も寿命に大きく影響を与えます。特に湿度や温度管理は、ピアノ全体や電子部品の状態に大きく関わるため、気をつけるべき重要なポイントです。
特に自動演奏ピアノは、湿度や温度の変化に非常に敏感です。湿気が多いと金属部品が錆びやすくなり、悪影響が出ることもあります。
湿度は50%程度を保ち、温度は一定の範囲内に調整することが理想です。
また、エアコンや加湿器を使って、適切な環境を保つことも有効です。
特に梅雨や冬場は管理が難しいため、気をつけておきましょう。
長期間使用しない場合の保管方法
長期間、使わない場合はカバーをかけて埃を防ぎ、湿度の影響を避けるために専用の乾燥剤を入れるなどの対策が必要です。
湿気や埃から守ることで、次に演奏するときも安定した状態を保つことができます。
また、定期的に電源を入れて軽く動作を確認すると長期間の放置によるトラブルを防ぐことができます。
そして何より、機械の中にソフト(フロッピーディスク)を入れっぱなしにしてはいけません。
そのままにしておくとディスクに傷が付いて音源を読み込めなくなる場合があります。
…ということで、色々確認したところ基盤やセンサーが問題ではなく、フロッピーディスクに問題があって作動しなかったのが分かりました。
よーく、見るとディスクにキスが付きまくっていますね、
これでは読み込めることが出来ないので、代わりのフロッピーディスクを用意します。
今は無き、フロッピーディスク。
傷が無いディスを探すのも一苦労です。
ほとんどが傷ついて読みこめないのが多いので…
ともかく、代わりのフロッピーディスクを機会に読み込ませたところ自動演奏はちゃんと作動しました👍
動画を投稿しようとしたらデータ量が多いので、Xに作動している動画を載せたいと思います。
自動演奏装置付きのグランドピアノ🎹
— ピアノリペア工房 (@pianorepairkobo) July 3, 2024
内部の部品等に異常は無かったので、フロッピーを入れてちゃんと動くか確認したところ…
「かっこう」をちゃんと演奏してくれました🎶
1987年頃に製造されたピアノがこうして蘇るのは感慨深い👍 pic.twitter.com/MPmTcr8WQX
自動演奏装置の内部には多くの機械部品と電子部品が密接に関連しており、一部の故障が全体の動作に影響を及ぼすことがあります。
また、鍵盤や基盤の清掃や定期的なチェックが不足するとアクション機構に影響を与え、最終的には大きな修理が必要になることもあります。
故障のリスクを減らすためには装置の確認も含め、定期メンテナンスを行うことがとても重要です。