さて、前回は弦張り作業が完了したので音を出して音階を合わせなくてはいけません。
弦を張ったとは言え、一本につき約80㎏の力(張力)が掛かっているためそのままにしておくと変な癖がついて調律しづらくなります。
そのため早急に音を出せるように内部機構のアクションを調整/修理していきます。
中を確認してみると大分ホコリが溜まった状態。
そのままにしておくとカビが発生したり、虫害が出る可能性があるので、積もりに積もったホコリを除去していきます。
…の前に、一番右のハンマーが何かがおかしいですね。
よーく見てみると…ハンマーが折れている💦
という訳で、急遽ハンマーの修理を開始。
グランドピアノでありがちなのが、このようにハンマーが折れてしまっていることがたまにあります。
このハンマーが折れるのは弾いたり、経年劣化のせいで折れるのではなく、内部機構を引っ張り出した時に調律師が折った可能性が高い。
工房にこのG2Aが到着した際に試弾したら最高音の音だけが出なかったのはこれが理由ですね。
あまり言いたくはないが、最高音だからあまり弾かないだろうという考えで、そのまま修理をしない調律師はたまにいる💦
本来なら折れたら直すのが普通ですが、このグランドピアノの定期調律を担当していた調律師はその考えだったのでしょうね…悲しい
ともかく、このままではいけないので新品の部品を用意し、折れたハンマーを修復します。
ハンマーの修復は適切な工具さえされば、すぐ交換できます。
あとは内部機構(アクション)にハンマーを取り付けて大まかな位置と角度を調整して作業は完了。
このように中を確認、分解しないといけない場合があるので、年数が経っているピアノの場合は確認が必要不可欠です。
さて、突発的なアクシデントがありましたが、これで本来の内部掃除に移ることができます。
分解するとホコリが溜まっているのが分かりますね。
幸い、緑色のクロスやフェルトに虫害は見当たらなかったので中を綺麗にすれば大丈夫そうです。
勿論、埃だけでなく金属部品も綺麗にしていきます。
この金属部品は「バランスキーピン」と呼ばれ、鍵盤の軸になる重要な部品。
表面がサビついていると鍵盤の動きが悪くなるので磨いていきます。
磨き終わった「バランスキーピン」
綺麗になりましたね。
これで動きが悪くなることはないでしょう。
ホコリや汚れが内部機構に付着したままだとピアノの音色が鈍くなったり、タッチが重く感じることがあります。
そして金属部分のサビや汚れは、ピアノの劣化を早める原因になります。
清潔に保つことで、長期間にわたり良い状態で演奏を楽しむことができます。
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ヤマハピアノの修理作業🛠️
— ピアノリペア工房 (@pianorepairkobo) July 1, 2024
アクションを確認してみたら最高音のハンマーが根本から折れてる💦
搬入時に音が鳴らなかったのはこれが原因でした。
とりあえず、自動演奏機の隙間に入っていたハンマーを回収。… pic.twitter.com/6HRym1UF9S