張弦を始める前にチューニングピンが傾かないようにするためのピンブロックを打ち込んでいきます。

左が元々のピンブロックで右が新しいピンブロックです。

色が全然違いますね。

高さが同じのピンブロックをフレームに打ち込んだら穴を開けて、今回使用するチューニングピンを準備します。

チューニングピンには太さや長さ、色にも多数種類があるので、修理するピアノに適したチューニングピンを使っていきます。

ピンブロックの穴開けが終わったら、弦を巻きつけるためのチューニングピンを打ち込んでいきます。

巻いた後の高さが均一になるように全てのチューニングピンの高さを揃えます。

今回はオリジナルと同じ3回巻で弦を巻いていく予定です。

中音から高音までの芯線が張り終えました。

張力を上げたままにすると全体のバランスが崩れるので、低音部の巻線を張る前に少し緩めます。

巻き線が張り終えたら音をある程度の所まで上げていきます。

折角張った弦が切れないようにチューナーを使って音を上げていきましょう。

音上げ作業が終了したら次は本体の組み上げに入ります。

取り外した棚板と底板を付けていきましょう。取り付けが終わったら今度はアクション修理に入ります。

動作不良でまともに弾けない状態だったアクションを分解し、新品の部品に交換していきます。

今回のメインはスプリングの交換作業になります。

アクションで使われているスプリングはとても重要な部分で、金属疲労のせいで折れてしまったりするとまともに弾けなくなる場合があります。

赤い丸部分が金属疲労で折れたスプリング。

これが原因で動作不良が起きるので既存のスプリングは全て交換しなくてはいけない。

一つ折れたということは他のも折れる可能性があるからだ。

ダンパーを一つ一つ外して確認。

一見使えそうだが、ちょっと触っただけで折れてしまうのが多々あった。

やはり年数がたっていると金属疲労が目立つ。

ダンパーのスプリングが折れてしまうと止音不良の原因になるので、折れてる場合は必ず交換しなくてはいけない。

一応、ダンパーのスプリングの交換作業は終わったので次はハンマーのスプリングを診ていく。

ハンマーのスプリング。

パット見、問題ないように見えるがスプリングの角度が画像になっている場合、少し触るだけで折れてしまうのがほとんどだ。

ちなみこれが折れてしまったハンマーのスプリング。

こうなってしまうとハンマーがスムーズに戻らなくなってしまうので、新しいスプリングに交換します。

新しいスプリングを交換する際は既存のスプリングを溝から取り外してから、溝に新しいスプリングを入れて白い紐(スプリングピンコード)を通していきます。

交換が完了しました。

既存のスプリングと比べると美観が全然違いますね。

何より新しいスプリングにしたことで反発力が増しました。

これで打鍵した際にハンマーが手前に戻りやすくなります。

ハンマーのスプリング交換が完了したら「ブライドルテープ」を交換していきます。

この部分はハンマーが戻りやすくするための部品で、経年劣化で茶色くなり千切れてしまうことが多々あります。

交換し終わった「ブライドルテープ」。

見た目が全然違いますね。

10数年空きのピアノをメンテナンスする時は必ず交換する部分なので修理作業項目に必ず載る部品。

これで問題なく稼働することができます。

今回のメイン修理となる部品の交換修理作業はこれで終わり。

あとは出来上がった部品を一つづつ組み上げていきます。

組み上げ作業ももうすぐで完了。

終わり次第、鍵盤を組み込むためのキーピン磨きを始めていきます。

鍵盤の軸となる部分が経年劣化により錆と緑青がこびり付いています。

この状態だと鍵盤の動作に影響が出るので磨いていきます。

綺麗になりました✨

これで問題なく鍵盤を組み込むことができます。

磨き作業が終わったら鍵盤の緩衝材になるクロスを入れていきます。

打鍵時に鍵盤は下がるのでパンチングクロスと呼ばれる緩衝材が必要になります。

しかし、このクロスは虫食いの被害に遭うことが多く画像のようにほとんど喰われていることがあります。

右が新品のクロスで左がオリジナルのクロスになります。

虫食い状態のオリジナルを使うのは緩衝材が無い状態のまま使用するのと同じなので、新しいパンチングクロスを準備し交換していきます。

パンチングクロスの交換が終わったら鍵盤の磨き作業に移ります。

鍵盤上面が黄ばんでいますね、セルロイド特有の汚れです。

昔のピアノは象牙の代用品としてセルロイドを使っていました。

これを磨いて綺麗にしていきます。

上面に付いている汚れと傷を無くすために鍵盤を一つ一つ研磨していきます。

セルロイドの場合は磨くとムラが出てしまうので、ムラが出ないよう確認しながら鍵盤上面を磨いていきます。

黄ばんでいる鍵盤がまだ磨いていない白鍵で、白い艶が出ている鍵盤が磨いた後の白鍵。

ちょっとした作業をするだけでもこれだけ違くなります。

白鍵の磨き作業が終わったら次は黒鍵も磨いていきます。

磨いていない黒鍵。

表面に埃と油が付着しており、くすんで見える。

白鍵同様磨くだけでも大分違くなるので早速綺麗にしていきましょう。

磨き終えた黒鍵。

最初と比べると艶も出て美観そのものが大分変りました。

この調子で全ての鍵盤を磨いていきます。

白鍵、黒鍵の両方の磨き作業が完了しました。

上面に付着していた傷と油等も消え、黄ばんでいた鍵盤も艶が出て白く綺麗になりました。

この後は鍵盤を本体に組みこみますが、その前にダンパーフェルトの交換作業に移ります。

音を止めるために必要なダンパーフェルト。
長年使っているフェルトは弦溝が付いていたり、空気中の水分と油を吸ってガチガチに硬くなっているので新しいフェルトに交換していきます。

ダンパーのフェルトはセクションごとに形が違うので記録をしてから取り外し、最低音のダンパーから順に並べてフェルトを取り外していきます。

全てのフェルトを取り外すことができました。

次に新しいフェルトを準備します。

新しいダンパーのフェルト。

セクションごとにフェルトの形が違うため測定したとおりにフェルト裁断していきます。

裁断したフェルトを低音部から順に貼り付け開始。
新しいフェルトにしたことで音の止まりも良く、美観も改善しました。

貼り終えたらハンマーを取り付ける前にダンパーの調整を始めます。

右のペダルを踏んだ際に全てのダンパーが一斉に動くように調整をします。

普段はハンマーが付いている状態ですることがほとんどなので、この状態でするのは見えやすく作業がやりやすい。

ダンパーの調整が終わったらハンマーを組み込んでいく。

ハンマーの取り付けが完了。
ようやく見慣れた形になりました。

これで整調の作業を開始できます。

完成まであともう少し。

まず最初にハンマーが真っすぐ動いてるかの確認。

ハンマーが左右にブレてしまうと音の粒が揃わないためハンマーを前後に動かし、ブレていないか低音/中音/高音のセクションごとに確認をしていきます。

真っすぐハンマーが動くのを確認したらハンマーの間隔を揃えていきます。

ハンマーを一つ一つ弦に近づかせ、弦の真ん中を叩く位置へ調整していきます。

ハンマーの位置調整が終わったら鍵盤の高さを揃えていきます。
メーカーによって高さの基準や測定方法が違うので、ピアノのメーカーを確認してから作業を行います。

鍵盤の高さを揃えるにはペーパーパンチングと呼ばれる専用の部品を使っていきます。
色によって厚みが違うので、適したパンチングを選択し、高さを揃えていきます。

ペーパパンチングを入れている作業風景ですね。
パンチングは紙なので、癖が付かないようにピンセットを使って調整していきます。

鍵盤の高さ調整が終わったら鍵盤の深さを調整していきます。
専用の定規を使って、鍵盤を下げた時の深さが一律になるように全て揃えていきます。

鍵盤の深さ調整が終わったら、ゆっくり鍵盤を下げた際にどれだけハンマーが弦に近づくかの接近調整を行っていきます。
タッチや音量に影響が出る部分なので、慎重に確認します。

接近作業調整が終わったら次にバックチェック作業に移ります。
この作業は打弦後に戻ってきたハンマーを一定の位置で捉えて、連打性能と二度打ちと呼ばれるリバウンドを防止する調整でもあります。

4本とも少し疎らなので揃えていきます。

調整はこれで完了。

本来ならダンパー調整に入りますが、最初にやっておいたので、次は音上げを開始しします。

一応チューナーを使って音上げはしていましたが、新しい弦はすぐ音が狂うので何回も音上げしていきます。

音上げ作業が終わったらパネルを組み上げてNO.100の修理作業は完了となります。