おはこんばんにちは。
もう少しでピアノ本体の調整作業も完了です。
今回は『ダンパーの総上げ』という工程となります。
今までの作業は音を出すための工程でしたが、この作業は音を止める作業となります。
ピアノは打鍵して音を出す楽器ですが、音を止めなくては音が重なり過ぎてうるさくなります。
そのため、ピアノは音を適度に止める機構が備わっており、何よりここが一番重要な部分でもあります。
他の楽器とかだと弾いたり吹いたりしている人が直接振動を抑えると音は止まりますが、ピアノの場合は演奏者が直接弦の振動を止めるのではなく、ダンパーと呼ばれる部品が音を止めていく形になっております。
赤丸が音を止めるための「ダンパーフェルト」という部品です。
ゴキブリの被害にあった部分ですね。
ダンパーは打鍵時に手前にきて音を伸ばしますが、打鍵後はダンパーが奥へいき、音を止める役割となっています。
打鍵時にダンパーは手前(緑色の矢印)、打鍵後のダンパーは奥に(赤色の矢印)動作することで普段聞いている音になります。
そしてフェルトの他にもう一つ大切な部分があります。
それが「ダンパーロッド」と呼ばれる部品になります。
並んでいるダンパーの下に長い銀色の棒があります。
付いてる場所としては下の画像の赤い直線部分です。
右のペダルを踏むと全ての「ダンパー」が持ち上げられて、それにより音は解放され響くようになります。
音を伸ばしたまま(右ペダルを踏みながら)弾くことができるのはこの部品があるためです。
では『ダンパーの総上げ』とは何?
右ペダルを踏んだ際に、全てのダンパーが均一に手前へ来るようにするための作業です。
このダンパーを持ち上げるタイミングがバラバラだと音は止まらなくなるし、ゆっくりペダルを戻した時に一つの音だけが止まらずに止音不良が発生したりします。
揃るための調整方法はペダルを何度も踏みながら手前に来るタイミングが遅いものと早いものを区別していき、緑色の部分を専用の工具で前後に調整していきます。
ここの部分を「ダンパーワイヤー」と呼んでおり、実際は見えない部分なので経験とカンで根元の部分を前後に曲げて調整します。
前から見るとこんな感じですね。
ピアノ調律師が何か見えないものを探って作業している場合はネジの増し締めかダンパー系の作業になります(笑)
『ダンパーの総上げ』の作業は88本中69本~72本ほどあるので遠目から全体の動きを確認し、細かな微調整をする時は近くに寄って小刻みにペダルを踏んで揃えていきます。
頻繁に遠目から見たり、近くに寄ったりする動作が多いので体力のいる作業でもあります。
それにこの『ダンパーの総上げ』はちょっとした力加減で物凄く変わる部分なので慎重に全体を揃えていきます。
何より中腰のまま体制でする作業でもあるので迅速かつ的確に作業を進めていきます👍