鍵盤に関連する部品交換作業は完了したので、今度は内部機構のアクション修理を開始。

年数が経っているためこちらの部品も破損している部分が多々ありました。

破損しているハンマー。

我々、ピアノ調律師の間ではハンマーのフェルトが木部から剥がれてしまった状態を「ハンマーパンク」と呼びます。

これでは正確に打弦することが出来なくなり、音量の出ないモコモコした力の無い音色になってしまいます。

また、パンクして広がったフェルトが隣のハンマーに干渉して動作不良の原因にもなります。

多くのピアノ【アップライトピアノ問わずグランドピアノ】にはハンマーのフェルトが剥がれないようにリベットが施されていますが、今回のピアノの場合はハンマーにリベットが無いタイプでした💦

ハンマーパンクが起こっている場合は本来、ハンマーそのものを交換するのが基本です。

…が、その交換作業をしようとするとかなり高額な金額になってしまいますので、応急修理をすることになりました。

という訳で、ハンマーフェルトの再接着中。

まず最初にハンマーのフェルトに食い込むよう糸を使ってぐるぐる巻きにしつつ、ある程度接着したら最後はクランプで圧着していきます。

一度圧着してしまえば再度簡単に剥がれることはありませんので、とりあえずこれで安心ですね。

あとはきちんとハンマーと弦を合わせることで、ある程度の音色は回復します。

ハンマーフェルトの圧着作業が一通り完了したら今度はハンマーフェルト表面の整形【ファイリング】作業に移ります。

打弦し続けるとハンマーフェルト表面に弦の跡が残ります。

これを【弦溝(げんみぞ)】と呼び、そのままにしとくと音色に影響が出てしまうため溝を出来るだけ無くしていきます。

あまり削りすぎるとハンマーの寿命が短くなるので、頃合いを見ながら作業を進める。

多少溝が見えなくなるぐらいまで削れば作業は完了となります。

ピアノの音質はハンマーの状態によって大きく左右されます。

ハンマーが劣化すると、弦を叩く際のエネルギー伝達が不均一になり、音がこもったり、響きが失われたりします。

ハンマーの整形を行うことでハンマーの表面を滑らかに整え、弦との接触面を均一にすることができ、これにより音がクリアに響き、全体のバランスが取れた美しい音色を実現できます。