2022年の10月ごろから修理を開始した作業記録となります。
中々する機会のない大掛かりな作業だったので、改めて詳しく記録として残そうと思いました。
このピアノは大正時代に製造されたヤマハピアノ。
製造番号は5500番台。相当古いピアノになります。
そこまで古いピアノだと今現在まで残すのには何度も修理してるか、もしくは何も手を加えていないボロボロの状態で現在まで残っているかのどちらかになります。
今回のピアノは前者で何度も修理されていた跡がありました。
しかし、いくら部品を新しいのに交換してもピアノ本体の素材である木材には限界が来てしまうことがあり、このピアノのメインとなる修理もその木材が関係しております。
その木材、もとい部品の名称は『ピン板』と呼びます。
『ピン板』とはフレームの下にあり、弦が巻き付いてあるチューニングピンが無数に刺さっている木材の部品のことを呼びます。
この『ピン板』が破損するとピアノの調律をしようにも音が止まらない不具合が出てしまうのです。
木材にも寿命があり、大正5年~9年といえば1916年ごろになります。
大体100年は経っていますね。
その時からこの『ピン板』以外の部品は交換されて現代まで何とか形を保っていましたが流石に『ピン板』も交換する時期になったということでしょう。
『ピン板』が破損してるのを見極めるのはとても簡単です。
それは調律しても音が止まらずすぐ狂うこと。
これに尽きます。
木材そのものが経年劣化により割れてしまって張力を保つことが出来なくなってしまっているのです。
張力には一本当たり70~90㎏掛かっているので、ちゃんとした『ピン板』でなければいけないのです。
そのため今回の修理作業は『ピン板交換修理作業』として修理を進めていきます。
なお、今回の作業は本当に稀な修理です。
基本的に『ピン板』は交換せず、新しいチューニングピンと弦を張って壊れてる部品を交換して作業が終了するのがほとんどです。それじゃあ、すぐ交換すればいいと思いますが交換するには4~5か月は掛かります。
なにより『ピン板』の交換をするにあたって注意することが多々あります。
それは『ピン板』には堅木を使わなくてはいけません。
ケヤキ、ナラ、カシ、チーク、ブナ等ですね。
この木はとても強度と耐久性が高いので『ピン板』の素材になるには十分な木材です。
ただ、とても硬いので加工するのがとても大変です。
素材選びが終わった後は新しい『ピン板』の形を整えますが、これも時間が掛かります。
そして、その作業が終わったら今度は200本以上の穴を開けていく作業があり、やり直しが効かない一発勝負の作業になります。
とりあえず今回はここまで。
一応この大正ヤマハの修理記録も随時載せていきたいと思います。