シュべスターピアノは三番目に古い歴史を持つメーカーで、一台一台手造りしているピアノです。
特徴的なのは響板に使われている素材は北海道の赤エゾ松を約6年ほど自然乾燥し、最良の状態で響板に使用しているピアノです。
今回は柏市のM様からクリーニング依頼としてピアノをお預かりし、クリーニング作業Bプラン+修理が必要な項目を足した作業内容となりました。それではピアノの状態を確認していきましょう。
ハンマーが戻らず、打鍵することが出来ない状態になっていますね。
この状態だとまともに弾けないので部品を交換していきます。
蝶番やチューニングピン等の金属等も経年劣化によって錆びとくすみが目立ちます。
後で専用の工具で綺麗に磨いていきましょう✨
後ろも確認してみると埃が溜まっていました🔍
本来は外装磨きが終わってから掃除するところだが、今回は裏の掃除から始めていきたいと思います。
刷毛と掃除機を駆使して埃等を取っていきます。
ピアノの裏掃除は工房に持ってきた際にしか出来ない作業なので、入念に掃除していきます。
ある程度掃除が終わりました。
ここの裏は出庫間近になったら再度掃除をする。
次はパネルを取り外して部品を取り外していきます。
部品の取り外しが終わったらチューニングピンと弦磨き、また外装磨きを行うために本体を寝かします。
最初は中の掃除と金属等の磨き作業から始めます。
シュベスターのロゴ部分に埃等で黒ずんでいる。
専用の洗剤を使ってロゴを綺麗にしていこう。
文字の隙間も拭いていく。
ここの部分を綺麗にするだけでも大分印象が変わる。
埃等の黒ずんだ部分を掃除したので文字が明るくなりました。
大分違いますね👍
次は弦磨き作業に入ります。
よく見ると黒い斑点が弦に付いてます。
これが錆です。
放っておくと断線の原因になるので、錆取り専用の道具を使って錆を取っていきます。
弦磨きが完了しました!
黒い斑点の錆が取れたのですっきりしましたね。
この調子で他の金属部分も綺麗に磨いていきましょう👌
経年劣化と埃のせいでくすんでいるチューニングピン。
これを綺麗に磨いて艶を出していきます。
元々のチューニングピンが黒いタイプのチューニングなのを確認できました。
磨き終わったことで艶が出たのが分かりますね。
これで金属磨きの作業は終わりです。
次は外装の磨き作業に移ります。
研磨剤を使うので中に汚れが入らないようにカバーを掛けていきます。
磨き作業をする前の側面の状態。
結構汚れが付着しており、ひっかき傷のようなものも多数あった。
これを研磨して傷を取っていく。
外装磨き前と同じ部分の側面。
研磨をしたことで引っ掻き傷がや汚れが無くなりました。
艶が出て鏡のようになりましたね✨
この調子で他の外装部分も磨いていきましょう👌
鍵盤蓋のロゴ部分。錆によってくすんでおり、周りも細かい傷がちらほらあるのを確認🔍
ピアノ本体の側面と同じように鍵盤蓋や他のパネルも研磨して綺麗にしていきます。
傷が無くなり、ロゴが綺麗になりました。
やはり外装だけでなく、ロゴも綺麗になると印象が変わりますね👍
磨き終わったパネル等は埃が被らないようにカバーを掛けておきます。
これで外装のクリーニング作業はほとんど終わったので、次は本命のアクション修理を開始します。
アクションの修理を行う前にハンマーストップレールのアルミ部品が油等が付着して黄色くなり、べた付いている。
まずこれを綺麗に取っていく。
結構汚れているため研磨剤を使ってこびり付いている汚れを取っていきます。
綺麗になりました✨
それでは本命の修理に入るため本格的に部品を分解していきましょう。
最初に245本のネジを一つ一つ取っていきます。
この作業が中々時間の掛かる作業です💦
部品の軸になる「センターピン」と呼ばれる部品が不調を起こしているので、そこを交換するため分解しております。
分解が終わりましたが、本番はこれからです。
ここから330本ほどの「センターピン」を交換していきます。
新しい「センターピン」を用意します。
一つの袋に100本入っているので3袋ほど手元に置いて準備しておきます。
それでは交換作業開始です。
既存のピンを一つ一つを抜いて新しいピンに交換していきます。
あまり力任せにピンを抜くと木が傷んでしまうので慎重に抜いていきます。
あっと言う間に1つ目の袋もなくなり、2つ目の袋ももう少しでなくなる・・・ようやく半分まで交換しました。
3つ目の袋に入ってた最後のセンターピンもなくなったので、予備で持っていたセンターピンを持ち出して作業は完了👌
あとは経年劣化している他の部品も新しく交換していきます。
「ブライドルテープ」と呼ばれる部品の交換。
ここはハンマーが次の打鍵をする際に必要な部品で、ここまで経年劣化で破損していると千切れる場合があります。
新しいのが左で既存のは右です。ここを交換していきます。
「ブライドルテープ」の交換が終わりました。
綺麗になりましたね✨
あとは全ての部品を組み上げて形にして、鍵盤の掃除兼部品交換を開始します。
「ブライドルテープ」の交換が終わったら次は「フレンジコード」の交換作業になります。
経年劣化によってガチガチに固まってしまっている💦
このまま放置したら切れたりして動作不良になる場合があるので、この部分も新しいのに交換していきます。
新しい「フレンジコード」に交換完了。
これで切れることはなくなりました。
アクションの部品交換はほとんど終わったので次は鍵盤を綺麗にクリーニングしていきます。
鍵盤の木口、手前の部分ですね。
経年劣化により色が黄色になっている。
ここの部分は交換ができるため鍵盤の上面を磨きつつ新しい木口にしていきましょう。
新しい木口にするため一つ一つ既存の木口を取っていきます。
既存の木口を取り終えたら新しい木口を張っていき、余分に出ている部分を削っていきます。
磨き前の鍵盤。
傷や汚れ、油等が表面に付いている。
折角のピアノクリーニング作業なので外装だけでなく鍵盤も傷を無くし、艶を出して綺麗にしていきます
磨きの作業が終了。
本来持っている艶を取り戻し、綺麗になりました✨
鍵盤の磨きに木口も交換が終わったので、次は鍵盤を取り付けるためにキーピンを磨きます。
こちらがキーピン。
鍵盤の軸になる部分です。ちょっとくすんでいますね🔍
錆やくすみの原因で動きが悪くなるのでここを磨きます✨
磨き終わりました。
光沢が出て表面もツルツルです。
この状態になったら鍵盤を入れて、出来上がったアクションを入れていきます👍
ようやくピアノの形になってきました🎹
ここからは中身の調整作業に入ります。
全部分解したので位置がバラバラになっている場合があるので結構時間は掛かると思います。
最初の作業はハンマーと弦が真っすぐ当たるかの調整を行います。
ハンマーと弦の適切な位置調整が終わったら次はハンマーと鍵盤のタイムラグを無くすための作業に移ります。
専用の工具で高さを調整し適切な位置になるまで確認、調整します。
次は鍵盤の調整を開始。
白鍵、黒鍵の高さを揃えていきます。
鍵盤の高さ調整が終わったので、次は鍵盤の深さを揃えていきます。
寸法通り調整しても合わない場合があるので、その時は自分の感覚と経験を信じて調整を行っていきます。
黒鍵のあがき(深さ)調整。
奥に調整のためのペーパーパンチングがあるのでピンセットを使い深さを調整します。
鍵盤の深さと高さ調整が終わったらキャプスタンボタンの間隔を調整開始。
向きが揃っていないと鍵盤のタッチに影響が出るので調整します。
ペダルを踏んだ時にダンパーが均等に上がるための調整を施します。
奥のほうの部品を調整するため専用の工具を使って調整していきます。
次は鍵盤を押した時のダンパーの始動位置と鍵盤のタッチ感を揃えていきます。
大体の調整作業が終わりました👍
これであとは調律とパネルの組み上げのみです。
組み上げる前に全体的な響きを確認しながら調律作業を行います。
調律が終わったらマフラーフェルトを取り付けます。
ちゃんとフェルトにハンマーが当たるか確認中。
マフラーも取り付けが終わり、パネルを組み上げていきます。
完成です!
あとは納品するまでは大切に保管し、出庫前に全体を確認してクリーニング作業は終わりになります👍
※今回の整調作業は簡略化していますが、整調工程を詳しく載せているページはこちらから