今回は虫害にあってしまったバランスパンチングのクロス交換。
ピアノは精密な楽器で、特に内部に含まれるフェルトや木材は虫の絶好の餌場になり得ます。
特に鍵盤やペダル、アクションの周辺は汚れがたまりやすく、害虫が繁殖する確率が高くなってしまいます。
なぜ害虫が繁殖するかというとあまり使用されていないピアノは内部の空気が滞留し、また、使用頻度が低いと清掃や調律が行われないため結果として虫害を放置してしまうからです。
特に、倉庫や部屋の隅に放置されているピアノは注意が必要。
虫害は初期段階では分かりにくく、気づいたときには深刻な状態になっていることが多いです。
例えば、フェルトやクロスが徐々に食べられてしまい、鍵盤が反応しなくなったり、または音が変わるといった形で気づく場合があります。
虫害が発生したのを見過ごすと、音質やタッチ感に影響が出たり、修理費がかさむこともあります。
定期的にピアノの内部をチェックし、初期段階で問題を発見することが重要です。
虫害の被害に遭った赤いクロス。
食べられてしまい、形が崩れているのもあれば全部食べられてしまっている場合があります。
左側のほうは跡形もなくなっていますね。
基本的にはフェルトやクロスを食べる虫はヒメマルカツオブシムシが多く、ピアノ内部の部品を主に食害する害虫です。
彼らは湿気の多い環境を好み、小さな体を利用してピアノ内部に侵入します。
最初の兆候として、フェルトの表面に小さな穴や食べられた跡が見つかることが一般的です。
あとはシバンムシともいう虫も存在します。
この虫は木材やフェルト部分に穴を開ける害虫です。乾燥した木材を好み、内部の部品を侵食することで鍵盤の動きや木材そのものをボロボロにすることがあります。
シバンムシの存在を特定するには、小さな粉末状の木屑が周囲に見られるか確認するのが効果的です。
今回は前者のヒメマルカツオブシムシによる被害でしたので、新品クロスに交換していきます。
新品のクロスに交換完了
交換時に錆びついたピンも磨いて綺麗に✨
これで鍵盤周りの問題は一件落着です。
勿論、内部の清掃だけでなく埃が溜まりやすいピアノの後ろも清掃しなくてはいけません。
後ろの部分に溜まった埃を放置しておくとホコリが空気中の水分を吸い、カビやシミの原因になりえますし湿度が高い状態だと木材が湿気を吸収しやすくなるため上記と同様に害虫の繁殖が活発になり、ピアノがダメージを受けるリスクが高まります。
特に梅雨や夏場は湿気が増し、除湿対策を怠ると害虫が増殖しやすくなります。
ピアノの裏側[響鳴板と支柱]ですね、
大分ホコリが溜まっています。
ピアノ裏側の構造は複雑で隠れ場所が多いため清掃して綺麗にしなくてはいけません。
事前に虫害を防ぐにはあえて害虫が嫌う環境を用意するのも一つの手です。
害虫は明るく風通しの良い場所を嫌うので、ピアノ設置部屋のカーテンを適度に開け、通気を心がけたり、定期調律やメンテナンス時にピアノの内部や周辺を掃除することでホコリや汚れを減らし、害虫のエサとなる物質を排除します。
ホコリが無くなり、綺麗になりました。
これでホコリの蓄積を防ぐことでき、害虫の発生リスクを低減できます。
湿度を50~60%に保つことで、害虫の活動を抑えることが可能です。
もし除湿管理が難しい場合はピアノ専用の防虫剤「ピアノスカット」や「ニューエスコート」は、ピアノ内部の虫害防止に効果的です。
これらはピアノ内部に設置しやすく、害虫の発生を未然に防ぐ設計がされているので必要な際は調律師に相談して用意してもらうのがベストです。
Xでも作業風景を投稿しております♬
引き続きカワイピアノBL71の修理作業🛠️
— ピアノリペア工房 (@pianorepairkobo) July 29, 2024
虫喰いに遭ってボロボロになってしまったクロス。
新品と比べてみると歪な形になってしまってますね💦
鍵盤の軸部品(バランスキーピン)を磨きつつ、新しいクロスに交換していきます✨ pic.twitter.com/7cPskq6yyZ