バネの全交換作業
まず最初に内部機構の修理作業を開始。
50年以上、年数が経っているピアノの場合はほとんどの部品が経年劣化の影響で破損や損壊していることが多い。
特に金属は一見あまり問題ないように見えますが、ネジ等の部品はともかく、細かいスプリング系の部品は特に金属疲労の影響で大きな問題を抱えている場合があります。

という訳で全体の状態を確認するためアクションを分解。
一つ一つ外して破損している部品があるか細かく確認していきます。

ハンマーを手前に戻すのをサポートするバネ。
見た目が黒ずんで所々折れてしまっている
構造上、グランドピアノとアップライトピアノは別物になります。
グランドピアノの場合、ハンマーは打鍵時に下から上に動いて弦を叩き、重力の力も手伝ってハンマーは元の位置へスムーズに戻ります。
アップライトピアノの場合は弦が縦に張ってあるので、ハンマーは前から奥へ向かう前後運動が必要となります。
そのためハンマーを元の位置に戻すためにはたくさんのスプリング(バネ)やそれを補助するコードが使われています……が
今回のようにバネが折れてしまっている場合だとちゃんと動作せず、演奏するのに支障が出てしまいます。

画像はそのバネのひとつの「バットスプリング」と呼ばれる部品。
⇚の黒ずんでいるバネが既存のバネで
⇒の輝いているバネが新品のバネ。
バネの付け根の部分が切れているのが確認できますね。
途中で千切れているとハンマーを手前に戻す役割を果たさないため新品に交換しなくてはいけません。
そして何より既存のスプリングと比べると美観も良くなり、性能面としても新しいスプリングにすることで反発力が増し、打鍵した際にハンマーが手前に戻りやすくなります。

新しいスプリングを交換する際は既存のスプリングを取り外してから、新しいスプリングを組み込んで白い紐(スプリングピンコード)を通していきます。
一つ一つのバネを外しては新品に交換。
この作業をひたすら繰り返していきます。
勿論バネはここだけでなく、「ダンパースプリング」と呼ばれるバネもあります。
主にここは音をちゃんと止めるのをサポートするバネで、このダンパーのスプリングが折れてしまうと止音不良と呼ばれる音が止まらなくなる原因にもなるので、金属疲労で折れてる場合は必ず交換しなくてはいけません、

⇒が既存のバネとなります。
よく見ると大分黒くなっていますね。
ここも一見、問題ないように見えますが少し曲げただけですぐ折れるバネが多々ありました。
この状態のバネではちゃんとした演奏は出来そうもないので新品に交換していきます。

基本的に半世紀以上経っているピアノの場合は全交換したほうが今後の憂いも無く、安心して使用することができます。
時間は掛かりますが、ちゃんとした動作を獲得するには時間を掛けてでも全交換しなくてはいけません、
Xでも作業風景を投稿しております♬
午後からの調律へ行く前にフクヤマピアノの部品交換⚒️
— ピアノリペア工房 (@pianorepairkobo) August 22, 2024
アップライトピアノには鍵盤を押した後に次の打鍵が出来るようバネ(スプリング)が付いてます。
…が、約40〜50年経ったピアノの場合だと経年劣化でバネが折れやすくなっている場合があります😅… pic.twitter.com/YtjOAiVfET