アトラス社製、ロイヤルR503のクリーニング作業。

高温多湿に置いていたせいか鍵盤の動きが悪く、鍵盤表面等にカビと油が付着していた。

鍵盤の軸になるバランスキーピン。

ここまで錆びていると動きに支障が出る。

また、錆の影響で鍵盤木部とくっ付いてしてしまい、鍵盤を外すときに一緒にバランスキーピンも取れてしまう場合がある。

経年劣化によって錆付いてしまったペダル。

今回はクリーニング作業なので底板を外し、磨いていきます。

弦が巻きついてあるチューニングピン。

写真では分かり難いが、緑青が付着していてチューニングピン全体が緑色になっている。

ロイヤルピアノの底板。

分解とクリーニングするために本体を寝かした状態。

木材の劣化により底板表面の化粧板が剥がれそうになっている。

本体の金属磨きをしやすいように底板を外し、響板や駒の割れ、弦に錆が付いているか確認していきます。

弦磨きを開始。

響板や駒の割れはありませんでしたが、やはり金属部分はほとんど錆ついていたので念入りに錆を取っていきます。

アクション等が組み込まれると見えなくなる部分ですが、色々な角度から光を当てて見て現に錆が付いているか確認し、錆を取っていきます。

弦磨きが一通り終わったら今度はプレッシャーバーの磨き作業。

ここも本来は艶が出ているが表面に油と埃が付着しているためくすんでいる。

調律をする時に目立つ部分なので綺麗にしていきましょう。

磨き終わりました。

表面を綺麗にするだけでも大分見栄えが変わりますね。

弦磨きとプレッシャーバーの磨きも終わり、次はチューニングピンの磨き作業。

緑青が付いているので時間が掛かる。

光を当てて角度を変えながら磨いていきます。

本体の金属磨きの他に底板に付いているペダルも磨いていく。

まず底板を外してペダル部品を一つずつ外していく。

金属が酸化しており、全体的にくすんでいるのでこれを磨いていきましょう。

金属磨き専用の機械を使い、ペダルを磨いていく。

両手でちゃんと持っていないとペダルが吹っ飛んでいくので注意しながら磨いていきましょう。

磨き終わったペダル。

光沢と艶が出ましたね、ピカピカになりました✨

弦、ピン、ペダル磨きと外装磨きの作業が終了したので、これから綺麗にしたペダルの底板を付けて本体を起こします。

本体を起こしたら鍵盤の軸になるバランスキーピンとフロントキーピンを磨いていきます。

根元まで錆びついているので専用の溶剤を使い、綺麗に磨いていく。

これがさらに悪化すると緑青になったりして鍵盤がスムーズに動かなくなる。

磨き終えたバランスキーピンとフロントキーピン。

見栄えもだいぶ変わり、何よりこびり付いていた錆等がなくなったので表面がツルツルしている✨

この状態なら鍵盤もスムーズに動く。

次は鍵盤磨き。

上面に斑点のカビが付いているため一本づつ磨いていきます。

カビを取るためにアルコール除菌を使用すると鍵盤にヒビが入ることがある。

これはプラスチック樹脂が反応して劣化する現象で、ケミカルクラックといいます。

鍵盤専用のバフ機で上面を綺麗にしていきます。

時間は掛かりますが確実に綺麗になります👍

斑点状のカビがなくなり、鍵盤上面に艶が出てピカピカになりました✨      

この調子で黒鍵も磨いていきます😊

黒鍵の上面。

油が付着して表面が白くくすんでいる。

正面から見た黒鍵。

白カビが付いており全体的にベタついていました💦

白鍵と同じく磨いて綺麗にしていきます👍

長時間磨いていると側面の黒い塗装が取れてしまうので、状態を見ながら磨いていく。

磨きが完了👍

表面のべた付きやカビが取れて綺麗になりました✨             

磨き残しがないか全体的に確認していく。

確認が終わり次第、磨き終わった鍵盤を本体に収めていくが、その際に鍵盤が適切な状態で軸(バランスキーピン、フロントキーピン)に入るか確認しながら鍵盤を収める🔍

鍵盤も収め終わったので次はアクション修理。

適切な動作をしているか一本ずつ確認していきます🔍

赤い丸で囲った部分は動きが鈍かったのでここの部分を取り外し、原因を診ていきます。

軸の部分が錆ていたので、部品を交換します。

連打する時に動きが鈍いとタッチに影響が出るので注意が必要。

動作不良の場合は原因をいち早く見つけることがとても大切👌

アクションの動作確認が終わったら、次はハンマーを確認。

赤い丸部分はハンマーフェルトとハンマーウッドの剥がれによる隙間だ。

これを修理しないと後々大変なことになる。

専用の接着剤を使い、隙間をなくすように圧着する。

隙間がある状態でピアノを弾き続けると接着面が完全に剥がれてハンマーパンクという不具合が起きてしまう。

通常の音でなく、気の抜けた音が出てしまうため隙間があるハンマーを見つけ次第、圧着していく👍

ハンマーフェルトとハンマーウッドの圧着が完了。

本来は新しいハンマーを付けたほうが良いが今回は応急処置として圧着しました。

次はハンマーのフェルト部分を見ていきましょう🔍

弦溝が付いているハンマーフェルト。

この状態だと打鍵したときに弦がハンマーの溝にハマってしまうため音が詰まった音になったり、雑音の原因となります。

それらを回避するため表面を削っていきます。

ハンマーファイリング後のハンマー表面。全部削るのではなく、ほんの少し跡を残す。

全体的にこの状態まで削ってからハンマーを取り付けていく。

本来なら整音の作業に移行したいが、今回は最後に行います。

ハンマーを取り付ける前にここも交換しなくてはいけない。

ハンマー打鍵時にハンマーを手前に引っ張る部品「ブライドルテープ」。

ここは基本的に経年劣化のため色が茶色になったり、ちょっと引っ張るだけでボロボロになってしまう💦

ブライドルテープは既存のまま使えるのならそれに越したことはないが大体が千切れたり、下の赤い長方形の部分(チップ)が割れて使い物にならなくなるのが多い。

なによりハンマーに不具合があった時は必ずここを触るので・・・💦

そのためピアノクリーニング作業をする時はここを交換するのは基本。

交換作業が完了したブライドルテープ。

既存のブライドルテープはガチガチに固まっているが、新しいのは弾力性や耐久性があり、壊れにくい。

なによりハンマーを手前に戻す動作が滑らかになる。

必要な部品交換が終わったら整調作業を開始。

ハンマーの弦合わせから始まり、ダンパーの調整まで一気に進める。

画像は鍵盤の高さを一定にするための鍵盤ならし(高さ調整)作業。

※詳しい整調手順はこちらから

整調が終わったので次は調律♪

ものすごくピッチが低くなっているので段階的に音を上げていく。

436HZなら438HZにし、そこからもう一度440HZになるように調律していく。

いきなり音を上げると弦が切れてしまうからだ。

調律が終わったら「整音」を開始。

一つ一つの音を揃えるための作業なので、調律をしてからじゃないと出来ない作業。

針を刺しては全体の音を確認し、怪しい部分をもう一度刺して音の粒を揃えていく👍

整音が終わり次第、納品するまでピアノを保管します。